
【金融機関の方向け】歯科医院の経営指標と問題点等について
先日、税理士会と日本政策金融公庫との勉強会があり参加させて頂きました。その際に、公庫の方から、歯科医院や医療法人はとっつきにくいイメージがあるとのことで、財務諸表を見るうえでポイントとなる点はあるか、というご質問を頂きました。
今回は色々回答させて頂いた点についてブログにさせて頂こうと考えました。
下記1、2の分析は、比較的使えますし考え方も簡単ですのでぜひご参考ください。
1 売上対地代家賃の比率からの分析
売上対地代家賃比率は、概ね5%~10%の範囲内に収まりますが、これが8%を超える場には、箱(診療所面積)に対して売上が低いことが伺えます。
もちろん、売上が上がらない原因は種々あるのですが、良く経験するのは下記2パターンです。
(1) まず、ユニットを増設するスペースがあるにもかかわらず未増設であるなど診療所面積自体を有効利用できていない可能性があります。
増大できる場合には(借入させてでも)早めに増大させましょう。思っている以上にユニット増大でスムースに売上利益が上がります。
(2) 地代家賃比率が高い場合で、かつ、人件費率が20%~25と低く一見良好に見える場合、人不足で売上を上げ切れていないことがままあります。
奥様などご親族が事務を手伝うなどの協力を得ていない院長はなかなか人材採用の時間を割けず、医院のカラーにあったスタッフを採用する、などの丁寧な採用活動が行えず、雇ってもすぐに辞めてしまうなど問題を抱えている場合があります。
このような場合、例えば人材採用について採用文章の作成から面談まですべてワンストップでサービスを提供してくれる業者などありますから、そういった業者の紹介などがソリューションになることが良くあります。
2 材料費ではなく変動費と利益との関係
矯正報酬は給与処理よりも外注処理されることが圧倒的に多いです。
材料費は概ね15%程度でも、矯正報酬を加味した変動費が高い場合(20%を超える場合)、売上が高くても矯正報酬が増大していて(変動費が高くなります)、利益を圧迫していることが伺えます。
矯正報酬は委託費や外注費に含まれてしまうため注意しましょう。
特に個人の場合、青色決算書の欄が少なく外注費に計上され見過ごされていることが多いです。
ソリューションとしては、
①院長の休診日に矯正の予約を取らせることで院長のユニット利用を妨げないようにしてもらっています。
また、
②インビザなど比較的修正が難しくない部分矯正については、外注でなく勤務医や院長が行うなど工夫をしてもらっています。
これらで多少変動費増大解消します。
以上です。
歯科は基本的には保険診療をメインに据えて経営を行う方が圧倒的多数ですから、ユニットごとの売上は概ね頭打ちとなります。
このため、“黄金律がある” などと言われるほどうまくいっている医院の指標は似通ってきます。
ですから、これと比べることで問題点が発見しやすいので決してとっつきにくいなどはありません。
ご参考になれば幸いです。